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彼は、驚きながらも冷静にナイフをベットから抜き畳んだ。そして、着替えをして一息つくと鏡の前に座った。そして、鏡に映る自分自身に向かって話かけた。
「おはよう、黎。今朝も助けてくれてありがとう。今日はナイフだからキリさんかな。キリさん相手なら今日は危なかったんだね。お疲れ様、黎」
外から見ていると馬鹿に見える光景である。彼が話しかけしばらくすると鏡に変化が起こった。鏡に映る彼の顔が勝手に変化してのだ。
(ああ。おはよう、煉。確かに今日はキリだったな。もし扉が無ければ傷を負っていたかもしれない)
鏡に映る顔は口を動かしているがさすがに鏡から声が聞こえてくるわけではない。声は煉と呼ばれた少年の頭の中に直接響いていた。
(そういえば、キリが着替えたら来いって言ってたぜ)
「え~。それを早く言ってよ。キリさんは起こるとすぐナイフ投げてくるから怖いんだよ」
(知ってるよ)
黎が軽愚痴を叩き、その発言に煉は頭を抱えて怯えていた。
(怯えてるのはいいが、さっさと行ったほうがいいんじゃないか)
「そうだった。少しでも早くいかなきゃ」
煉が立ち上がり部屋を出ようとする。ドアを潜った所で煉は立ち止まった。
「あっ、忘れてた」
煉は振り返り再び鏡の前に顔を出した。そこには、さっきと同じ状態のまま笑みを浮かべている黎がいた。
(ふっ。思い出したか)
「いや、忘れたわけじゃないよ急いでただけで」
煉が必死に言い訳し、それを黎はにやにやしながら見ていた。
(まぁ、いいさ。それより急がなくていいのか)
「そうだったそれじゃ…」
煉はもう一度座ると目を閉じた。黎も煉が目を閉じたのを確認してから静かに目を閉じた。そして煉の口から言葉が紡がれる。
「我が頭脳は他がために」
(我が肉体は己がために)
そして二人は同時に目を開け、声をハモらせた。
「(今日も一日歓喜の歌を!)」