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「でもそれだと壊さんの取り分が少なくないですか。元々壊さんに来た仕事なのに半分以上も貰うことは出来ませんよ」
(いいから貰っとけよ、煉。くれるっていうならさぁ)
「黎は黙ってて。これは僕達が仕事をする上で決めたルールでしょ」
(そういや、そんなルールも作ったっけ)
心の中で会話する二人だったが、煉は口に出して言っているため、周りには独り言のようにしか見えない。
「…依頼」
その二人の会話を見ていた壊と呼ばれた青年はポツリと言葉を落とした。
「えっ。そうなんですか」
それを聞いた煉がなるほどという顔でうなずいた。
(依頼ってどういうことだ?説明しろ、煉)
壊の言葉が理解できない黎は、煉に説明を求めた。
「ん。ああ、そっか。黎は分からないんだっけ」
(分かるのはお前くらいだ!)
煉の返答に黎は怒りながら叫んだ。もちろん心の中の事なのでどれだけ叫んでも煉にしか聞こえないのだが。
(さっさと説明しろ)
「ああ、うん。壊さんはこう言ったんだ。『これは俺からの正式な君達よろず屋への依頼だから政府からの報酬とは別に報酬を渡すんだ。五百万はその報酬も含んだ分だよ』って」
(どこをどう取ったらそんな訳になるのか知りたいよ)
煉の言葉に少しあきれながら黎はそう言った。その時、台所に立っていたキリが食堂のほうにやってきた。
「壊。さっそく言ったのか。仕事が速いというかなんと言うか」
キリは壊がもうすでに煉たちに仕事の依頼をしたのを見て少しあきれていた。すると、壊は懐からメモ帳とペンを出すとメモ帳の中ほどを開いて何か書き始めた。それが書き終わるとそのページをキリの目の前に突きつけた。キリはそれにざっと目を通すと呟いた。
「ああ、そうですか。まぁ、いいけどね」
そういって自分が持ってきた朝ごはんを机に置くと壊の隣に腰掛けた。壊が満足そうにうなずいてメモ帳を机に置いた。そのメモ帳には達筆な文字でこんな事が書かれていた。
[思わば吉日って言うじゃないか。それに他の人が先に依頼されても困るし。ただでさえこの家にいる人たちはトラブルをたくさん抱えているんだから。つまりは早いもの勝ちさ。]
そう、壊はその言葉足らず故に普通に会話が出来るのは現在、煉を含め二、三名しかおらず、普段は筆談にて他の人とコミュニケーションをとっていた。